見積書や提案書の作成は、生成AIと相性がよい部分があります。過去の案件をもとに構成を整える、説明文のたたき台を作る、顧客向けに分かりやすい表現へ直す。こうした作業は、AIを使うと早くなることがあります。

一方で、見積書や提案書は営業文書であり、あとから取引条件の根拠になります。金額、納期、作業範囲、除外事項、保守条件、支払い条件をAI任せにすると、実務上のトラブルにつながります。

生成AIを営業文書で使うなら、文章作成の道具として使う部分と、人が責任を持って決める部分を分ける必要があります。

AIに任せやすい作業

生成AIに任せやすいのは、判断済みの内容を文章に整える作業です。

たとえば、次のような作業です。

  • 提案書の構成案を作る
  • サービス説明を相手向けに分かりやすくする
  • 箇条書きのメモを文章にする
  • 過去の提案文を今回向けに短くする
  • 専門用語を少しやわらかくする
  • 議事メモから提案に使う論点を抜き出す
  • メール本文の下書きを作る

AIに考えさせる前に、提案の材料を人が用意します。顧客の課題、提案する範囲、含める作業、含めない作業、見積金額、納期、前提条件。これらが決まっていれば、AIは文面を整えやすくなります。

反対に、材料が曖昧なまま「提案書を作って」と依頼すると、それらしい内容で空白を埋めようとします。読みやすいが実態と合わない提案書になりやすいです。

金額と条件はAIに決めさせない

見積書で一番危ないのは、金額や条件をAIが勝手に補うことです。

たとえば、過去の案件メモを渡して見積書の下書きを作らせると、AIが一般的な項目名や条件を補うことがあります。無料対応、追加修正回数、納期、保守範囲、支払いタイミングなどが、実際の方針と違う形で入るかもしれません。

見積書や提案書では、次の項目をAIに決めさせない方がよいです。

  • 金額
  • 値引き
  • 納期
  • 契約期間
  • 支払い条件
  • 作業範囲
  • 除外事項
  • 保守や修正対応の範囲
  • 成果物の権利や利用条件

AIは文章を整えることはできますが、会社として引き受ける条件を決める責任は持てません。金額と条件は、必ず人が決めた値を入力し、出力後にも人が確認します。

顧客情報をそのまま入れない

営業文書には、顧客名、担当者名、相談内容、予算、取引条件、未公開情報が含まれることがあります。生成AIへ入力する時は、どの情報を入れてよいかを先に決めてください。

社内ルールがないまま個人アカウントで使うと、誰がどの情報を入力したか分からなくなります。顧客から預かった資料、見積前の相談内容、契約条件、個人情報をそのまま入れる運用は避けた方がよいです。

最初は、情報を伏せた形でも使えます。

たとえば、実名を入れずに「製造業のA社」ではなく「既存顧客」「新規問い合わせ企業」のように置き換える。金額も最初は具体値を入れずに「初期費用」「月額費用」の説明文だけ作る。必要な部分だけ人が後から差し込む。こうした使い方なら、情報管理のリスクを下げられます。

会社として使うなら、利用するAIサービス、入力してよい情報、入力してはいけない情報、確認者を決めます。個人情報保護委員会の注意喚起でも、生成AIサービスへ個人情報を入力する場合の扱いには注意が必要だとされています。

下書き用の材料をそろえる

AIに良い下書きを作らせるには、プロンプトだけを工夫するより、材料を整理する方が早いです。

見積書や提案書の下書きでは、次の材料を用意します。

  • 相手の相談内容
  • 提案する目的
  • 作業範囲
  • 作業範囲に含めないこと
  • 料金と支払い条件
  • 納期や進め方
  • 相手が不安に感じている点
  • 過去に説明済みの内容
  • 使ってよい表現と避けたい表現

これらを箇条書きで渡すと、AIは文章化しやすくなります。逆に、材料がないままAIに提案内容を考えさせると、会社の方針と違う提案が混ざります。

最初に作るべきなのは、万能プロンプトではなく、営業担当者がAIへ渡すための入力メモです。メモの項目が決まっていれば、人によって下書きの品質が大きく変わりにくくなります。

提案書は相手別に変える

AIを使うと、提案書の文章を早く作れます。その分、同じような提案書を量産しやすくなります。

提案書で読者が見たいのは、一般的なサービス説明ではありません。自社の困りごとを理解した上で、なぜその提案なのかが分かることです。

AIで下書きを作る時も、次の情報を入れると相手に合わせやすくなります。

  • 相手が相談した背景
  • 今困っている作業
  • 今回は扱わない範囲
  • 提案の優先順位
  • 導入後に変わる作業
  • 相手が判断する時に見るべき点

サービス紹介文を長くするより、相手の業務に関係する部分を短く明確に書く方が読まれます。AIには、文章を増やすより削る指示も必要です。

確認フローを作る

AIで作った見積書や提案書は、送る前に確認フローを通します。

確認する人は、文章の自然さだけでなく、取引条件を見ます。特に次の項目はチェックリストにした方がよいです。

  • 金額が正しいか
  • 税込み税抜きの表記が合っているか
  • 作業範囲が過不足なく書かれているか
  • 除外事項が抜けていないか
  • 納期や前提条件が現実的か
  • 以前の顧客名や案件名が残っていないか
  • 顧客に伝えていない条件が入っていないか
  • 社内で承認されていない約束が含まれていないか

AIは、過去の文書にあった表現を今回の文書にも入れてしまうことがあります。前回案件の条件や顧客名が残ると、信頼を大きく損ねます。人による最終確認は省けません。

テンプレート化すると使いやすくなる

AI活用を個人の工夫に任せると、営業担当者ごとに出力がばらつきます。最初から全員に自由に使ってもらうより、会社として使うテンプレートを作る方が安定します。

テンプレートには、次のような項目を入れます。

  • 提案書の目的
  • 想定読者
  • 必ず入れる項目
  • 入れてはいけない情報
  • 文体の方針
  • 金額や条件は変更しない指示
  • 出力後の確認項目

このテンプレートを使えば、AIへの依頼内容が毎回そろいます。営業担当者はゼロから文章を考えるのではなく、必要な材料を埋めて下書きを作る流れにできます。

小さく試すなら1種類の文書から始める

見積書、提案書、営業メール、契約前説明資料をまとめてAI化しようとすると、確認すべきことが増えすぎます。

最初は、1種類の文書に絞る方がよいです。たとえば、初回提案書の下書きだけ、見積書の補足説明文だけ、提案後メールだけにします。

試行では、次の項目を記録します。

  • 下書き作成時間がどれだけ減ったか
  • 人が修正した箇所はどこか
  • 条件や金額の誤りが出なかったか
  • 顧客情報の扱いに問題がなかったか
  • 担当者ごとの文章のばらつきが減ったか

この記録があると、AIを広げるべき作業と、まだ人が書いた方がよい作業が分かります。

文章作成の前に責任範囲を決める

生成AIは、営業文書の下書き作成を助けます。特に、箇条書きのメモを読みやすい文章にする、説明の順番を整える、相手に合わせて表現を変える作業では使いやすいです。

ただし、見積書や提案書は会社としての約束につながります。AIが作った文章でも、送った責任は会社側にあります。

導入前に決めるべきことは、どの文書で使うか、どの情報を入力してよいか、どの条件はAIに触らせないか、誰が最終確認するかです。この線引きがあると、AIを便利に使いながら、営業上のリスクを抑えられます。

自社の見積書や提案書でAIをどこまで使えるか分からない場合は、まず今の作成手順と確認項目を一緒に整理できます。営業文書の下書き化やテンプレート化を検討している場合は、無料相談からご相談ください。

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